Hyper-V Server 2008 R2 で構築する仮想化基盤

最終更新日時:2011/06/02 03:52:35
Hyper-V 2.0でキー要素となるLive MigrationとCluster Shared Volume(CSV)に関する概略を説明したうえで、 Hyper-V Server 2008 R2を利用したLive Migrationの環境構築手順について記載します。
(※ソフトウェアデザイン2010年1月~2月の記事より掲載)
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1 Hyper-V Server 2008 R2

1.1 無償の高可用性仮想化ソリューション

Hyper-V はハイパーバイザー型の仮想化機能を提供しますが、Hyper-V 2.0では性能、可用性など様々な機能強化が図られました.

Hyper-V Server 2008 R2はWindows Server 2008 R2 のServer Coreをベースとし、Hyper-V の機能を提供するために特化した無償の製品となっています。しかしながら、有償であるWindows Server 2008, Standard Editionと比較し、CPUやメモリ、そしてフェールオーバークラスタリング(以下WSFC)よるLive Migrationが利用できるなど Windows Server 2008 R2, Standard Editionでは提供されていない機能が利用できます(表1)。

表1 Hyper-V Server 2008 R2 との比較
項目 Hyper-V Server 2008 Hyper-V Server 2008 R2 Windows Server 2008 R2
物理プロセッサ数 最大4CPU 最大8CPU Standard : 最大4CPU
Enterprise : 最大8CPU
Datacenter : 最大64CPU
論理プロセッサ数 16 (SP2 またはKB956710を適用することで24) 64 64
メモリ 最大32GB 最大1TB 最大2TB
クラスタリングによる仮想マシンの冗長化 - Quick Migration, Live Migration Standard : なし
Enterprise and Datacenter: Quick Migration, Live Migration
クラスタのノード数 - 16 16
管理UI コマンドライン、テキストベース設定ツール、リモートGUI管理(RSATまたはWindows Server 2008, Windows Server 2008 R2) コマンドライン、テキストベース設定ツール、リモートGUI管理(RSATまたはWindows Server 2008 R2) コマンドライン、テキストベース設定ツール、ローカルまたはリモートGUI管理
System Center Virtual Machine Managerによる管理 可能 (SCVMM 2008, SCVMM 2008 R2) 可能 (SCVMM 2008 R2) 可能 (SCVMM 2008 R2)
製品に付属している仮想インスタンスの実行権 なし
(仮想インスタンスで実行するOSのライセンスは個別に必要)
なし
(仮想インスタンスで実行するOSのライセンスは個別に必要)
Standard : Standard 1
Enterprise : Standard , Enterprise で合計4
Datacenter : 無制限
※ 最大数の仮想インスタンスを実行する場合、物理OS環境は仮想インスタンスの管理のみとなる
仮想マシンの同時実行数 128 (SP2 またはKB956710を適用することで192) 384 384
最大仮想プロセッサ数 128 (SP2 またはKB956710を適用することで192)
論理プロセッサ数の8倍
512
論理プロセッサ数の8倍
512
論理プロセッサ数の8倍

そのため、開発・テスト環境の構築への適用以外にも、実環境で動作しているサーバーをP2Vなどの技術を利用し仮想化し、Hyper-V Server 2008 R2のWSFC上で動作させることで、既存環境を延命化するだけでなく信頼性の向上や業務継続性の確保なども可能となります。また、Windows Server 2008 R2 で追加されたVDI(Virtual Desktop Infrastructure)の機能を提供することも可能となっています。

本記事ではHyper-V 2.0でキー要素となるLive MigrationとCluster Shared Volume(CSV)に関する概略を説明したうえで、 Hyper-V Server 2008 R2を利用したLive Migrationの環境構築手順について記載します。

1.2 Live Migration

Hyper-V 2.0ではLive Migrationの機能により、仮想マシンを停止させることなく、実行している物理マシンを移動させることが可能となりました。

Windows Server 2008のHyper-Vでは、WSFC上でQuick Migrationという機能が実装されていました。Quick Migrationは物理ノードを移動する際に仮想サーバーの状態(メモリ情報)をディスク上に保存し、別ノード上で保存した状態を読み取った後、再開する仕掛けとなっているため、仮想マシンに割り当てているメモリ量が多い場合や、ディスクの負荷が上がっていると、状態の保存、読み取り時間が長くなり仮想サーバーの停止時間が長くなります。また、WSFC上で仮想マシンは動作しているが、クラスターグループ内のリソース(例えばディスクリソース)の所有ノードを切り替える必要があるためさらに遅延が発生します。

これに対しLive Migrationでは仮想マシンの実行ノードを移動する際に、実行中のメモリ情報をディスクを介さずにネットワーク経由で、もう一方の実行ノードのメモリにコピーします。コピー中も仮想マシンは動作しているためメモリ内の情報は書き換えられますが、繰り返しコピーを実行し変更差分がほとんどなくなった時点で仮想マシンは停止し、もう一方の実行ノードにメモリの差分情報などを転送したうえで起動します。この切り替え時間が短いため、クライアントからはダウンタイムがないように見えます。(図1)

図1 Live Migration 動作イメージ

1.3 Cluster Shared Volume (CSV)

Live Migrationを実現するために、既存のクラスターのディスク管理とは異なるCSVという新しい機能が提供されています。これまでのクラスターでは、各物理ディスクに対して所有するノードが決まっており、そのノード以外はその物理ディスクにはアクセスできないようになっていましたが、CSVに割り当てたディスク領域はWSFCに参加している各ノードから同時にアクセスできるようになっています。また、仮想マシンが動作している物理ノードからCSVへのアクセスパスが切断された場合には、クラスターの内部通信を利用して別ノードを利用してアクセスできる(Dynamic I/O Redirection、以降リダイレクトアクセス)ようになっています。これにより、何らかの故障が発生しても利用者からは停止せずに継続して利用可能となるようになっています。(図2)

図2 リダイレクトアクセスの動作イメージ

1.4 サポートする仮想マシンのOS

Hyper-V Server 2008 R2でサポートする仮想マシンのOSおよびサポートするプロセッサ数について表2に示します。
なお、表2に記載されていない組み合わせについてもインストール可能なものもありますが、統合サービスがインストールできずにNICやディスクを認識できないなどの事象が発生する場合もあるので注意する必要があります。仮に正常に認識できた場合でもサポートは受けられない可能性があります。

表2 Hyper-V 2.0 でサポートされる仮想マシンのOS
サポートする仮想マシンのOS 仮想プロセッサ数
Windows Server 2008 R2 1, 2, 4
Windows Server 2008 (x64, x86)
Windows 7 (Business, Enterprise, Ultimate のx64, x86)
Windows Server 2003 with SP2 (x64, x86) 1, 2
Windows Server 2003 R2 with SP2 (x64, x86)
Windows Vista with SP1 (Business, Enterprise, Ultimateのx64,x86)
Windows XP Professional x86 Edition with SP3
Windows XP Professional x64 Edition with SP2
Windows XP Professional x86 Edition with SP2 1
Windows 2000 Server with SP4
Windows 2000 Advanced Server with SP4
SUSE Linux Enterprise Server 10 with SP1, SP2 (x64, x86)
SUSE Linux Enterprise Server 11 (x64, x86)
Red Hat Enterprise Linux 5.2, 5.3 (x86, x64)
※VMBus経由でなくエミュレートデバイスのみ
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